長崎の秋、「くんち」が始まると、胸がざわつく

10月7日から9日まで、長崎の秋を彩る「長崎くんち」が始まります。
諏訪神社の秋の大祭であり、長崎っ子にとっては一年でいちばん待ち遠しい3日間です。
この時期が近づくと、町の空気がふっと変わり、胸の奥がざわざわと落ち着かなくなる――そんな感覚がよみがえります。

今では「長崎ランタンフェスティバル」の方が全国的に知られているかもしれません。
それでも、昔からのじげもん(地元っ子)にとっては、やっぱり「くんち」こそが長崎で一番のお祭り。
原爆投下からわずか2か月後の1945年にも、料亭花月の旦那さんの呼びかけで、丸山の芸子衆が本踊りを奉納したといいます。
くんちは、長崎の人々がどんな時代にも失わなかった「底抜けの明るさ」と「たくましさ」の象徴なのです。

子どもの頃は、何よりも出店が楽しみでした。
諏訪神社から浜町、県庁坂を越えて大波止まで、約2.5キロの道のりにずらりと並ぶ屋台。
りんご飴、綿菓子、ヨーヨー釣り、射的、焼きそば……。
押し寄せる人波に身を任せながら、ざわめきの中を少しずつ進む――それが“くんちの風景”そのものでした。

小学生の高学年になると、友だち同士で出かけることが許されました。
お年玉を貯め、夏の花火代をとっておき、おばあちゃんの肩もみで稼いだ“肩もみ代”をせっせと貯金。
そしてようやく手にしたりんご飴を、こっそりかじる瞬間の幸福。
カリッ、シャリッとした食感のあとにあふれ出す甘酸っぱい果汁――あの背徳のひと口の味は、今でも鮮明に覚えています。

大人になってからは、出店よりも演し物に夢中になりました。
ジャーンと響くドラ、中国風の鉦の音、そして「モッテコ〜イ!」「ショモ〜ヤレ!」という掛け声の一体感。
躍動感あふれる「龍踊(じゃおどり)」や、空高く神輿を放り投げ、片手でキャッチする勇壮な「コッコデショ」。
見ているだけで、長崎の血が騒ぎます。

いよいよ今日から、じげもんにとって特別な3日間が始まります。
長崎の空の下、それぞれの胸の中で“私のくんち”が幕を開けていることでしょう。

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